友、日本の食人をもてなす料理

道場旬皿も五回目を迎え、今回は親しい友人たちをお招きし、おもてなしをすることになりました。

お迎えするのは、嵐山光三郎さん、周富徳さん、服部幸應さん、石鍋裕さん、田中経一さんの5人。あの「料理の鉄人」の時代を共に過ごした日本の「食人」たちです。

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2012年3月19日。銀座ろくさん亭で事前の打合せ。既にいろいろな料理のアイデアをメモした紙がたくさん鞄の中に入っていました。改めてアイデアをまとめるように、心を落ち着けて、愛用の筆でゆっくり丁寧に献立を新しい紙に書いていました。

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今回は食を楽しむ心と知識や経験豊富な方々をおもてなしするということで、相当の熱の入れようでした。実際に器を並べひとつひとつの料理をじっくりとイメージしているようでした。今回は容器の中で蒸すことができる器も新たに調達して面白い料理が飛び出しそうな予感です。

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どんな料理になりそうですか?と尋ねると、「驚くような新しい料理、作るよ。」 あれこれ考えているうちにさっと立ち上がり、さっと白衣を着ながら、厨房に向かって「おい豆腐水切っておいてくれたか?」 既に昨日までに考えていたいくつかの料理は試作の準備を指示していたようです。

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これは、豆腐をベースにした胡麻風味のふんわり優しいソースのうえに、季節の食材を盛りつけた目にも美しい春の景色が広がる一皿。?
作り終えた後にも「先付けには鯛と蛤と菜の花とか春を感じるものがいいかなあ」とか「やっぱり春子鯛(かすごだい)を使った前菜にするかなあ」と頭の中がなにやら騒々しい状態になっているようでした。
当日が楽しみです。

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2012年3月26日。銀座ろくさん亭。お客様をお招きする日です。
厨房には既に指示された食材がずらりと並んでいました。桜鯛、虎魚(おこぜ)、牡蠣、毛蟹、春キャベツ、鶏手羽先・・・やっぱり試作の時に書いた献立とはずいぶん違う料理になったようです。

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親しい友人をもてなす春の料理を書いた巻き紙を手に、「どう、これ面白いでしょ。」 よく見ると「驚くような新しい料理」というよりは、お招きする客人と食の話が弾むような料理や客人との思い出の料理などがずらり。道場流の技でのおもてなしから、道場流心のもてなしへ方針を変えたようです。友人であり食の通だから楽しんでいただける、シンプルだけど完成度の高い、そして心が通じ合う献立。道場流ですね。

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今回は最近あまり見なくなった昔ながらの技があちらこちらに顔を出します。例えばこれは「青寄せ」といって青菜の色素を取り出して色づけに使う方法をみせているところ。ほかにも白蒸しや潮汁の仕上げ方など事細かに若い衆に指示。厨房では常に「食にうるさい客人をもてなす」という緊張感が伝わってきました。

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これは鶏の手羽。仲の良い周富徳さんに教えてもらったという、鱶鰭を手羽で包んだ料理になります。オマージュ料理といった所でしょうか。石鍋さんにはさっぱりしたソースでいただく生牡蠣。他にもかつての総理大臣が好んだ海鮮カルパッチョなどが用意されました。

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伝統料理、思い出の料理、そしてやっぱりちょっとハイカラで自由な道場和食。アボガドのソースを作っているところです。

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そろそろ客人が見えるころ。厨房はやや緊張気味に時間を気にしながら作業のスピードが上がります。

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8階の厨房で料理をし、お食事は9階でゆったりと。一旦厨房から上がって本日の献立を説明中。客人からは「ほーっ」と笑みがこぼれます。この間、厨房では宮永料理長と若い衆が次の料理の仕上げと、夜の営業の仕込みとでてんやわんや。

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そしてまた、慌ただしく厨房へ。今回もほとんどの料理は本人が自ら手を入れ作りました。手探りで虎魚の身から小骨をはずすような細かな作業まで。客人が目の前にいるだけに、料理を食べていただく人を思い浮かべながら丁寧に丁寧に、といった姿勢をいつもより強く感じます。これは、先ほどの周さんの手羽先を仕上げているところ。

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白子から急遽作戦変更された虎魚の赤出しと炊きたてのご飯、手作りの漬け物。最後にマスカルポーネチーズのお汁粉、三宝柑のデザートでお食事が終了。

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試作も含めてこの日のためにたくさんの料理を考えたと話してくれました。「料理は無限にあるんだとつくづく思いました。今回はそぎ落とすのが大変だったんだよね。」お招きした5人のために、無限の料理から選ばれた今回の献立。道場六三郎を含めこの6人にしかわからない特別な喜びが詰まっているんでしょうね。料理には栄養があって、美味しさがあって、味わいがあって、歯触りがあって、見応えがあって、作る人・食べる人のストーリーがあって。そして料理には本当にいろいろな力があることを改めて実感しました。

第5回 [春]
友、日本の食人をもてなす料理

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