昔、タンパク源になる食材が少なかったときに、鴨や鮎のだしで茄子を炊くというのが流行ったことあったんです。これは鴨をオランダ煮にしてあって・・。オランダ煮っていうのは、なすびを針打ちしまして、みょうばん水でちょっとアクを止めてから、油で揚げるんですよ。揚がったら油抜きをして鍋にきれいに並べてぐーっと炊いていくんです。北陸のほうではよくやると思います。母親なんかもよくやってくれました。鴨は鍬焼きにして盛りつけるのもいいですし、小麦粉を付けて茄子の汁でさっと炊き上げるのもいい。そのだしがけっこうおいしいのでそれを葛きりに吸わせて添えます。北陸のほうではひやむぎを使ったりするんですが、だしを上手に使いきるんです。郷土の料理ですね。
鴨といえばやっぱりかも鍋ですかね。石川県の大聖寺に「片野の鴨池」があって冬になると天然の鴨が必ず来るんです。11月、12月。1月になるともういなくなるかな。長い竿に網を付けた道具を投げる昔ながらの猟をしてたのを思い出します。
鴨鍋は湯葉、白菜、粟麩、きのこなどと鴨を切って大皿に並べて用意します。鴨の骨でとっただし6(だし)、1(醤油)、1(みりん)を鍋に。それから北陸のほうではどんぶりに小麦粉が用意されて、鴨肉にその小麦粉をさっと付けて鍋へ。ものの30秒ほどで柔らかいところをいただくんです。
魯山人もその鴨鍋を大変喜んだのですが、肉は火を通しすぎると固くなるので女中に任せず自分で加減して茹でたという話が残ってますね。
そのほか鴨ロース、鴨の鍬焼き、鴨の立田揚げ、いろいろありますね。
そういえば魯山人がパリへ行ったとき、レストランで鴨料理が出されたときに、だめを出して、自分が持ってきたわさびと醤油で食べて、店の人を驚かせたという話も残ってますね。